よみがえれ!有明訴訟

佐賀地裁へ公正な審理・判断を求める署名をお願いします。(2014年2月)

首相官邸前での抗議行動
(2008年7月撮影)
小長井(諫早市)に打ち上げられた魚介類の死骸
(2008年8月撮影)
調整池に広がるアオコ
(2008年8月撮影)
諫早湾に広がる赤潮
(2009年8月撮影)
  1. 有明海・諫早湾
    有明海は、96kmに及ぶ奥行きに比べ幅が狭く、しかも平均水深が約20mと浅い内海です。このような地形的条件から干満の差が大きく湾奥部では約6mにも達し、また、速い潮流が特徴です。有明海は生物多様性の宝庫で、かつては日本一の漁業生産性を誇る「宝の海」でした。
    諫早湾は有明海湾奥部の西側に位置します。地元の漁師は、諫早湾のことを「泉水海」と呼びます。きれいな水が泉のように湧き出ている海という意味です。ちなみに有明海は黄色く濁った色をしていますが、これは栄養分が豊かに含まれているためで、有明海の生き物にとって暮らしやすいきれいな海であることを意味します。諫早湾に広がる泥干潟はそこに住む無数の生物(カニ、貝、ゴカイなど)によって、汚れた水をきれいに浄化して有明海に還元するという作用を持っていました。人間の体でいえば、腎臓のような役割を果たしていたわけです。 また、諫早湾は有明海の魚介類が産卵し、幼稚魚が成育する場所でした。人間の体でいえば、諫早湾は子宮のような役割を果たしていたわけです。
     
  2. 諫早湾干拓事業
    国営諫早湾干拓事業(通称「諫干」)は、農地造成と水害対策を目的として、諫早湾奥の干潟・浅海域を全長7kmの潮受堤防で締め切り、その内側に干拓地と調整池を造る複式干拓事業(海を締め切らない従来の干拓は地先干拓といいます)で、2008年3月に工事は完成し、現在、干拓地での営農が開始しています。
    1997年の潮受堤防の締切り(通称「ギロチン」)は、有明海の腎臓と子宮を一気に切除してしまいました。その結果、有明海の環境は急激に悪化し、そして魚介類が激減してしまいました。先祖代々有明海で生活してきた漁師たちが大切に守ってきた泉水海を海に出たこともない政治家や官僚がボタン1つで奪ってしまったのです。
    有明海が豊かであれば、無限の漁業資源が永久に生み出されていきます。しかし、政治家や官僚は、無限の資源よりも、公共工事によって得られるカネを望みました。子や孫に残すべき自然を潰し、政治家やゼネコンだけがカネを得て、市民そして子孫には借金だけを背負わせているのが、諫干の実態です。
     
  3. 現在の状況
     1997年、諫早湾奥部は、国営諫早湾干拓事業潮受け堤防によって締め切られた。それと前後して、諫早湾そして有明海の環境は悪化し、有明海全域で大規模な漁業被害が頻発している。そのため、有明海沿岸地域では、漁業者の自殺があとを絶たない。
     2010年12月、福岡高裁は、漁業者の訴えを認め、判決確定の日から3年以内に諫早湾干拓潮受堤防の南北両排水門を5年間にわたって開放するように命じる判決を下した。当時の菅直人政権は福岡高裁判決を受け入れ、同判決は確定した。その結果、国は、2013年12月20日までに潮受堤防を開放する法的義務を負うに至った。
     それから3年、国は何もしてこなかった。開門にむけた対策工事には3年の期間がかかると国は主張しておきながら、この3年間、国は、長崎県の反対を口実にして対策工事に着手してこなかった。
     11月12日、長崎地裁は、新旧干拓地農業者や長崎県農業振興公社らが起こした仮処分において、潮受堤防の開門をしてはならないとの仮処分決定を行った。
     開門を認めない決定の根拠となったのは、国が対策工事を怠ってきたこと、そして、国が有明海における漁業被害を主張しなかったことの2点である。つまり、このような確定判決と一見矛盾するような仮処分となったのは、国が、福岡高裁判決を真摯に受け止めず、判決の主文には従うが、開門の根拠となった有明海における漁業被害について認めたわけではないとの不遜な態度に終始したためである。
     国が福岡高裁判決を真摯に受け止め、諫早湾干拓事業の過ちを認め、有明海漁業者や干拓地営農者に向き合って自らの非を認め謝罪し「有明海の再生のために国も真剣に努力するので、漁業者も農業者も協力して欲しい」という態度に出たのであれば、今回のような混乱を招く仮処分は避けられたはずである。そればかりか、福岡高裁判決確定以降、遅々として開門が進まない状況の中で漁民たちが自ら命を絶つという事態も防ぐことができたはずである。
     また、本来、紛争の解決を目指す裁判所が、確定判決と矛盾する決定を出したことで、事態をさらに混乱に陥れたことに対しては、司法の役割を見失ったものとして憤りを禁じ得ない。しかも、11月19日、長崎地裁は、開門差し止め訴訟の原告である営農者側に対し、開門を求める漁業者側を相手取って国に開門を強制しないよう求める訴訟を起こす意向があるかを確認する求釈明を行った。本来、誰を相手にどのような訴訟を提起するかどうかは、処分権主義の下、当事者の専権事項であって、そこに裁判所が関与すべきでない。しかも、本来は対立当事者ではない農業者と漁業者を争わせる新たな紛争の火を点けることとなり、紛争解決の機関としての裁判所の役割を完全に放棄したものであると言わざるを得ない。
     もっとも、長崎地裁仮処分は、福岡高裁の確定判決の効力を失わせるものではない。国が負っている諫早干拓排水門を開放する法的義務はいささかも揺らがない。11月19日に参議院議員会館で行った「諫早干拓排水門の開門を求める緊急集会」には超党派の議員と220名を超える市民が集まり、開門を求める国民の声はさらに大きくなっていることを示した。
     開門を認めない仮処分決定の根拠の内、農業用水や湛水被害などの対策工事に関するものは、しっかりした準備工事を行うか否かの問題にすぎない。漁業被害に関するものは、現に存在する漁業被害を直視し、開門調査の意義を踏まえ漁業被害を主張するか否かの問題にすぎない。つまり、長崎地裁の仮処分決定は、福岡高裁確定判決と矛盾するものではない。
     国は、諫早湾干拓事業がもたらした漁業被害と開門確定判決を軽視し、開門確定判決が命じた開門義務の真摯な履行をサボタージュしてきた態度を真摯に改め、直ちに、対策工事について改善すべきは改善し、開門義務を履行すべきである。
     今後上級審の審理と本案の審理を通じてようやくその内容が確定する仮処分決定があるとき、相反する2つの義務のうち、国が従うべきは開門確定判決である。
    私たちは、国が福岡高裁の履行期限である12月20日に開門できなければ、直ちに、間接強制を申し立てる予定である。
     国は、確定判決をみずから守らなかったという憲政史上かつてない事態、そして、間接強制まで受けるという事態を恥ずかしいものと受け止めるべきである。そして、国の無策のために、長年苦しめられてきた漁業者たちをさらに苦しめる事態を招いた現実を直視すべきである。
     潮受堤防排水門の開門と開門調査は、有明海異変とまで言われた深刻な環境破壊のなかで不漁に苦しむ有明海漁民の悲願である。有明海沿岸4県にわたる深刻な環境破壊と漁業被害をもたらした有明海異変は、被害の広域さ、深刻さ、破壊された環境のかけがえのなさにおいて、歴史上希に見る環境破壊であった。不漁のなかで多くの漁民が陸に上がった。自殺に追い込まれた漁民も少なくない。漁業によって成り立っていた地域社会は破壊された。被害はもはや極限状態まで来ている。宝の海・有明海の再生は、待ったなしの急務である。
 (2013年12月19日) 

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